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自転車タイプの特定原付とは?電動キックボード・電動バイクとの違いや交通ルールなどを調べてみた

自転車タイプの特定原付が普及しつつある

自転車タイプの特定原付が新たなトレンドになる?(画像は普通自転車)
2023年7月1日の改正道路交通法施行(一部施行)から1年以上が経ち、街なかで電動キックボードをよく見かけるようになりました。
そんななか、新しい電動モビリティの普及を予感させるプレスリリースが発表されています。
16インチタイヤを履く特定原付
2024年9月5日、有限会社上山商会が特定小型原動機付自転車(以下、特定原付)に関するプレスリリースを発表しました。
これによると、同社の製品「MySmart16(マイスマート16)」の改良モデルが台数限定の割引価格で予約開始したそうです。
マイスマート16は、折りたたみ自転車タイプの特定原付。
16インチタイヤを履くモデルで、最新バージョンではバッテリーやモーター出力配分が改良されています。
ちなみに、マイスマート16の改良前モデルは大人気で完売したのだとか。
予約開始された改良型も、やはり売れ筋アイテムになるかもしれません。
離島で始まった新モビリティサービス
続いてもう1つ、新しい電動モビリティである、自転車タイプの特定原付に関するプレスリリースを見てみましょう。
2024年9月5日、glafit株式会社や津堅島 民宿 神谷荘などの4団体が共同でプレスリリースを発表。
これによると、沖縄県うるま市の津堅島にて、自転車タイプの特定原付「NFR-01Pro」を貸し出すモデル事業が2024年9月4日に開始されたとのことです。
このモデル事業は、観光スポットへのラストワンマイルの交通手段を提供し、持続可能な新モビリティサービスの導入方法を検討するもの。
NFR-01Proは平坦路なら満充電で40kmほど走れるようなので、交通手段が限られた観光地で活躍しそうです。
自転車タイプの特定原付は流行する?
初期モデルの好評を受けて改良版が発売されたマイスマート16と、観光地での活躍が期待されるNFR-01Pro。
どちらもフル充電で40kmほど走行できて、前後ディスクブレーキを装備と、かなり実用的な仕様になっています。
こうした自転車タイプの特定原付、今後けっこう流行りそうですよね。
また、街で頻繁に見かけるようになれば、同じ公道を走るドライバーにとっても無視できない存在となりそうです。
というわけで、この新タイプの電動モビリティについて詳しく知るために、情報を集めてみました。
次節では、自転車タイプの特定原付の基準や特徴、交通ルールなどを見ていくことにしましょう。
自転車タイプの特定原付の基準・特徴・交通ルール

自転車型特定原付のペダルは漕げる?(画像は普通自転車)
前節を読んで「自転車タイプの特定原付って何?」「特定原付って電動キックボードのことじゃないの?」と思った方もいるかもしれませんね。
実は、法律の定める基準さえ満たせば、自転車タイプや、そのほかの形状の車両も特定原付として認められます。
自転車タイプの特定原付の基準と特徴
次の基準を満たす車両は特定原付として登録できます。
【車体サイズ】長さ190cm以下、幅60cm以下
【変速機】AT機構
【原動機】定格出力0.60kW以下のモーター
【最高速度】20km/h以下
【その他1】道路運送車両法の定める最高速度表示灯が備えられていること
【その他2】走行中に最高速度の設定変更ができないこと
【その他3】道路運送車両法の定める保安基準を満たしていること
上記の基準に適合していれば、自転車タイプを含む二輪車だけでなく、三輪や四輪の車両も特定原付として認められます。
ただし、公道で特定原付を走らせるには、ナンバープレートの取り付けと、自賠責保険への加入が必要です。
自転車タイプの特定原付はペダルでも走れる?
自転車タイプの特定原付には、ペダルに似たパーツが付いています。
これは足を乗せるステップであり、一般的な自転車のように漕いで動力を得ることはできません。
もし、特定原付にペダルを漕いで走る機能が備わっていたら、20km/hを超える速度が出ることになります。
そうなると法律上の車両区分が変わるため、自転車タイプの特定原付はペダル走行できないようになっているのです。
なお、電動走行とペダル走行の両方が可能な電動モビリティは、一般原動機付自転車に区分されます。
このタイプの車両はいわゆる電動バイクであり、運転にはモーター出力に応じた免許が必要になります。
特定原付の交通ルール

特定原付の交通ルールは電動キックボードと自転車タイプで変わらない
自転車タイプの特定原付には、電動キックボードと同じ交通ルールが適用されます。
乗車の際は、一般的な道路交通法のほか、独自の乗車条件・交通ルールを守らなければなりません。
16歳以上なら免許不要
特定原付は運転免許を必要としない乗り物です。ただし、16歳未満の人が特定原付を運転することは道路交通法で禁止されています。逆にいえば、16歳以上であれば誰でも特定原付に乗れますし、日本国籍がなくても運転できます。
ヘルメット着用は努力義務
特定原付に乗る際のヘルメット着用は努力義務となっています。このため、ヘルメットなしで特定原付を運転しても罰せられません。とはいえ、転倒時のリスクを考えるなら、ノーヘルでの乗車は避けたほうが賢明です。
車道の左端を通行する
原則として、特定原付は車道の左側端を通行しなければなりません。車線の中央や右端、右側車線を走るのはNG。また、普通自転車専用通行帯が設けられた道路では、特定原付も自転車専用レーンを走る必要があります。
特例特定小型は歩道を走れる
自転車タイプの特定原付のうち、最高速度を6km/h以下に設定変更できるものは、特例特定小型原動機付自転車(以下、特例特定原付)として歩道を走行できます。
ただし、特例特定原付で歩道を走る際は、最高速度6km/h以下の走行モードに切り替えて、最高速度表示灯を点滅させなければいけません。走行モードを切り替えずに歩道走行すると、速度が6km/h以下でも違法となります。
信号のある交差点では二段階右折
信号のある交差点では、特定原付は必ず二段階右折しなければなりません。また、信号のない交差点でも、まず道路の左端に寄ったまま直進して、交差点の向こう側に渡ってから右折するように定められています。
一方通行の逆走はOK(条件あり)
「自転車を除く」「特定原付を除く」「軽車両を除く」の補助標識がある場合に限り、特定原付は一方通行の道路を逆走できます。なお、矢印と自転車マークの標識がある道路では、特定原付は矢印の方向にしか進行できません。
次のページ▷▷▷【自転車タイプの特定原付への問題点は?どうすれば安全に乗れるのでしょうか。】
自転車タイプの特定原付に問題点はある?

自転車型モビリティは見分けが難しい(画像はすべて普通自転車)
電動キックボードの規制緩和が決まった際は、「危険じゃないのか?」「事故が増えるのでは?」といった声が聞かれました。
では、自転車タイプの特定原付にも、危険性や問題点はあるのでしょうか。
一般論を知るために、知恵袋サイトで「自転車タイプの特定原付に問題点はあると思いますか?」と質問してみました。
質問へのご回答
「自転車タイプはタイヤが大きく、サドルに座れることもあって、キックボードより安全だと思いますね(Wさん)」
「類似するモビリティと見分けにくいのが問題。歩道の走行ルールを守る特定原付と守らない特定原付、違法な電動バイクなどが街を走っていますが、どれも同じような見た目なので、取り締まりが難しいと思います(Sさん)」
「電動キックボードより安全そう」というWさんと「取り締まりが難しそう」というSさん、どちらの意見にもうなづけます。
自転車タイプの特定原付には、一長一短があるといえそうですね。
特定原付の普及に応じた体制づくりに期待

タイプの異なる車両同士の共存には交通ルール遵守が欠かせない
電動キックボードとくらべて、自転車タイプの特定原付は運転しやすそうですし、走行安定性も高そうです。
ただ、そのぶん無茶な乗り方をされる可能性もあります。普通の自転車でも危険な運転をする人はいますしね。
何にせよ、自転車タイプの特定原付はすでに販売されているわけで、今後は街で見かける機会が増えると予想されます。
そうなると、車の運転にはいっそうの注意が求められそう。
当然ながら、特定原付に乗る人にも、交通ルール遵守と安全運転をしてもらいたいですよね。
運転免許が不要な乗り物とはいえ、そのことは交通ルールを守らない理由にはなりません。
新しい電動モビリティが普及するのは結構ですが、交通安全は守られて然るべき。
特定原付の普及に合わせて、利用者に適切な交通指導を行う体制もしっかり整えてほしいところです。
ライター:加藤 貴之
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