デカい!広い!大ざっぱ? アメリカ製キャンピングカーの魅力
「キャンピングカー」と聞いて、多くの人が頭に思い浮かべるのは、アメリカ製キャンピングカーなのではないだろうか。
ハリウッド映画やアメリカのTVドラマにはよく画面に登場するし、ときにはキャンピングカーが重要な役割を担う作品もある。
日本に最初に入ってきたキャンピングカーはアメリカ製だったという説もあるが、それを証明できるような記録はない。しかし誰もがキャンピングカー=アメリカ製を連想するぐらい、たくさん輸入されていた時代があった。
実際、2000年代初めまではさまざまなタイプが販売されていたのだが、現在はごく限られたモデルが輸入されるにとどまっている。
広々とした空間や充実した装備など、国産車やヨーロッパ車にはない魅力があるアメリカ製キャンピングカー。どうして今、そんなにも輸入台数が少ないのかを説明しよう。
「どこへでも快適な空間を」それがアメリカの考え方
モーターホーム=動く家。アメリカ製キャンピングカーほど、この言葉がピッタリあてはまるものはないだろう。
冷暖房はもちろん、キッチンもしっかり調理ができるだけの設備とスペースがあり、トイレもシャワーも完備。
キャンピングカーだから、旅先だから、という理由で「何かを我慢する」という発想がまるでないようだ。
そもそも、車両のサイズからして大きい。日本製に比べてはるかに大きいばかりか、さらに広さを求めて、停泊時には室内を拡げるスライドアウト機構がほぼ標準になっている。
広々としたリビングにはソファに大型テレビ、暖炉を模したファンヒーター。メインベッドルームにはクイーンサイズのベッドが鎮座する、という豪華さだ。
そしてもう一つ特徴的なのが、窓が比較的小さいということ。
ヨーロッパ製キャンピングカーは窓を大きくとって「風景や気候の変化を楽しむ」コンセプトが多いのに対し、アメリカ製の窓はあまり大きくないし、開く角度も少ない。「外が砂漠であれ、雪景色であれ、車の中は快適な我が家!」なのだ。
さてその違いはどこから来るのだろう?
広大な国土と旅に対する考え方
以前、ヨーロッパ製キャンピングカーの魅力についてお伝えした時、走行性能が高くてストレス知らず、と書いた。
その点ではアメリカ製キャンピングカーも、引けを取らない。大きくて重たくて、お世辞にも機敏な車とはいえないが、とにかく頑丈でタフ。
前項でも説明したが、アメリカ製のコンセプトは「砂漠だろうが雪山だろうが、快適な我が家を持ち運ぶ」というもの。そのため、車は大きく設備も豪華だ。
その背景には、広い国土と燃料が安価、という事情がある。
ご存知の通り、アメリカはひたすら広い。道路も(ごく一部の都市を除いて)だだっ広いし、南西部は行けども行けども砂漠か荒野。ショッピングモールの駐車場もとんでもなく広い。
つまり「車を小さくする理由がない」。
車内で寝泊まりするなら快適な方がいいに決まっている。だから常設ベッドにリビングにソファ…ということになる。
狭いなら車を大きくすればいい、コンパクトにする理由がない。燃料も安いから、大排気量のエンジンだって問題ない。
ただ、頑丈である必要はある。日本やヨーロッパのように、ちょっと走ったら隣の街、とはいかない。
モハヴェ砂漠のど真ん中でエンコしたら?水もガソリンもなく、照り付ける太陽の下、いつ通るかわからない他の車を待つのか?
そんなリスクを回避するため、アメ車のエンジンは非常にタフにできている。少々のことでは止まらない信頼感があるのだ。
立ちはだかる法律の壁
ここまで説明してきたが、かくいう私もアメリカ製のクラスCに乗っている。全長7m弱あるのだが、本国のカテゴリーに当てはめると「マイクロミニ」になるらしい。
それでもゆったりした空間と豊富な装備には助けられている。こんなに快適なんだから、もっと輸入すればいいのにと思うのだが、最初に紹介したように販売されているモデルはごく少数なのだ。
その理由はずばり「日本の規制に合うモデルが少なくなった」ため。
2000年頃を境に、本国アメリカのトレンドはより豪華に、より快適に、と変わった。
各社が居室の大きさや装備を競い合い、ラインナップは日本で登録できないサイズばかりになってしまった(日本の車両サイズは「道路運送車両の保安基準」で、長さ12m、幅2.5m、高さ3.8mを超えてはならないと定義されている)。
その結果、新車で購入できるアメリカ製キャンピングカーは、ほんの数車種しかないということになってしまったのだ。
今、新車で買えるのは?
日本で登録できるアメリカ製キャンピングカーを手に入れるにはどうしたらいいのか。
ひとつには「すでに輸入されている中古車を買う」。
幸い、説明した通り、アメ車は非常にタフだ。広い国の生まれだけあって、走行20万Kmぐらいではびくともしない。
本国でも20年、30年と現役を続ける車が多いおかげで、パーツの供給も心配いらない。
それでも「新車が欲しい!」場合はどうするか。
実は近頃、本国では「コンパクト」タイプが少しずつだが増えてきている。
これまでのベース車よりも一回り小型のフォード・トランジットをベースにしたクラスC、例えばウィネベーゴ・フューズなどが代表的だ。
コンパクトとはいえ全長7.4m、全幅2.3m、全高3.1mという堂々たるサイズ。セオリー通りのフル装備に加えて、1カ所だけだがスライドアウトも備えている。
気になるのがエンジンだが、嬉しいことに3200ccのターボディーゼルエンジンを搭載している、もちろん最新のコモンレール式クリーンディーゼル。アメ車といえば極悪な燃費、と言われたのは過去の話だ。
アフターコロナを見据えて、世の中がどうなるのか不透明な現在。もしかしたら日本人の働き方や遊び方も大きく変わるかもしれない。
「どこへでも快適空間を持ち出す」。
そんなコンセプトが気になる人なら、最新のアメリカ製キャンピングカーも、ぜひチェックリストに加えておこう。