“ガソリン車よりも長寿命”は間違い?いまさら知らないとは言えないディーゼルエンジンの長所
「エンジンかけっぱなし」がエンジンにとっては良い状態
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりもコストなど抑えながら大排気量を実現できることが、重いものを運ぶ“はたらく車”のほとんどが搭載する理由であると説明しました。
しかし、結果的に故障リスクを抑えられているのであれば、「ガソリンエンジンよりも寿命が長い」「ガソリンエンジンよりも頑丈」というのも間違いではないと言えます。
実際に、トラックなどの大型車の走行距離は一般的な自家用車よりもはるかに多く、それはエンジンが丈夫だからという理由があるように思えるでしょう。
しかし、実はエンジンの寿命にもっとも良い影響を与えるのは、ガソリンエンジンかディーゼルエンジンかというエンジンの構造の違いではなく、「エンジンをかけっぱなしにしている」ということです。
「週に1回の買い物」などの目的で使われる自家用車と違い、“はたらく車”、特に長距離トラックなどは、一度エンジンをかければしばらくエンジンを停止させずに長時間・長距離を走行し続けます。
実は、日常的な利用でもっともエンジンに負荷がかかる瞬間は始動時。
動いていない部品が動くときにもっとも抵抗が大きく、負荷がかかるため、長時間エンジンを動かし続けて始動回数を少なくすることが、エンジンの寿命を伸ばすことにつながります。
これはディーゼルエンジンでなくとも、ガソリンエンジンでも同じことが言えます。
たとえば、ガソリンではなくLPGガスを燃料とするタクシーは、エンジン自体の構造はガソリンエンジンとそう変わりませんが、タクシーを利用した際にメーターを覗き込むと、その走行距離が30万や50万キロになっていることは珍しくありません。
タクシーもトラックなどと同様に、一度エンジンをかけたら長時間かけっぱなしになります。
稼働が終わったあとも数日で再び動き出しまた長時間かけっぱなしとなるため、走行距離に対して始動回数は少ないのです。
反対に、短距離で始動を繰り返すような利用をしていると、エンジンの寿命は短くなるおそれがあります。
このようなエンジンへの負荷が高い条件で利用することは「シビアコンディション」と呼ばれ、車の寿命を少しでも伸ばすためにはメンテナンスが非常に重要となってきます。
エンジンの寿命延ばすには適切なオイル管理を
「エンジンかけっぱなし」がエンジンにとって良い状態であることと、日常的な利用でもっともエンジンに負荷がかかる瞬間は始動時であることには、共通して“エンジンオイル”の存在が重要となってきます。
エンジンオイルはエンジン内部の潤滑や冷却、洗浄、密閉、防錆などさまざまな役割を持ち、エンジンが本来の性能を長期間発揮するために、その管理は重要なものとなります。
その重要性は「人間でいえば血液」と例えられることがあるほど、なくてはならない存在です。
エンジンが動作中はエンジン内を循環して各部の保護などを行いますが、エンジンが停止するとエンジンオイルも循環を停止。
しばらくは各部に付着したオイルが残っているものの、時間とともにどんどんエンジン下部にあるオイルパンへ落ちていきますので、最終的にはオイルがついていない、金属むき出しの状態となります。
その状態でエンジンを始動させることはドライスタートやコールドスタートと呼ばれ、金属同士が直接擦れ合い、摩耗を促進します。
ひんぱんに利用されない自家用車ではこのコールドスタートが常態化していることも多いのですが、前述のとおり“はたらく車”の場合は「エンジンかけっぱなし」である時間、つまりエンジンオイルが十分に行き渡った状態にある時間が長く、それが自家用車よりも長持ちしている理由なのです。
しかし、これはあくまでも適切にエンジンオイルを管理していることが前提となります。
メーカーが指定する時期を大幅に超えてもまだ交換していない場合や、オイルが減っている状態などではエンジンオイルの本来の性能が発揮されず、エンジンにダメージが及ぶ場合があります。
ディーゼルエンジンであってもガソリンエンジンであってもこれは変わりません。
以上のことから、ガソリンエンジンであっても、「頑丈」と言われるディーゼルエンジンであっても、構造の違いによる寿命には差がなく、寿命を伸ばすためにはエンジンオイルが本来の性能を発揮できるよう適切に管理することが重要であると言えるでしょう。
ライター:MOBY編集部 高山 志郎
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