車中泊にポータブル電源は必需品か

ポータブル電源は車中泊の必需品か?【頼りすぎずに電気とは上手に付き合おう】




必要に迫られて使うのか、あるから使うのか


確かにポータブル電源はあると便利で、私の場合、主な用途は湯沸かし・ホットサンドメーカーなどの調理器具のための電源、ポータブル冷蔵庫の電源、照明や扇風機の電源、スマホやPCやカメラなどデジタル機器の充電、電動アシスト自転車のバッテリーの充電としてなどだ。

電動工具 ポータブル電源 あると便利

車中泊中ではないが、電動工具の電源として使うこともある。

しかし、シガーライターソケットに差し込んで使うインフレータブルSUP用などの高圧空気入れポンプは入力が12V15Aとなっているのに対し、ポータブル電源側のシガーライターソケットの出力は12V10Aなので、残念ながら使えず(無理は禁物)、これは個人的には結構残念な点だ。

最初は使うことが面白くて使用頻度が高かった。

使い始めた当初は、火を使わずに簡単な調理ができることが何か文化的になったような気分になれて、それが大した意味もなく面白くて多用していた。

ポータブル電源 あると便利

日頃海岸の駐車場で食べる昼食のカップ麺やカレーメシやお茶のためのお湯もその都度電気で沸かすようになり、ホットサンドメーカーを使って色々な物を温めては(コンビニのパンやデニッシュ類、揚げ物やおにぎりなども断然美味くなる)楽しんでいた。

ソーラーパネル ポータブル電源 あると便利

比較的手軽にソーラーパネルから充電ができ、走行中もシガーライターソケットから充電ができて、電気代が全くかからないことも輪をかけて面白かった。

ポータブル電源 あると便利

消費量や残量も一目でわかるので、計算しながら使っていると映画の中のアポロ13のクルーになったような気分になれて、これも案外面白かった(本当に事故に遭った人達に対しては面白がるなんて甚だ失礼な話ではあるが、あくまで私は映画の中のトム・ハンクスなので)。

ポットに入れたお湯の温度は冷めないが、気持ちは冷める


このように使うこと自体が楽しかったので、当初はとにかく頻繁に使いまくっていたのだが、時を経て落ち着いたというか、悪く言えば現在は熱が冷めてきたようで、「その日に必要なお湯は家で沸かしてしっかりした保温性のあるポットに入れて持って行く」に結局戻ってしまった。

ポット ポータブル電源 あると便利

車中泊する際も、電気でお湯を沸かせると便利だが、ガスの火を使える場所で沸かしてポットに入れておけば半日~1日は十分だ。

照明や扇風機の電源も、その機器自体のバッテリーで十分なものが多く、ソーラーパネル付きもあるので、照明に関してはポータブル電源がなくても困ることなどは全くない。

照明 ポータブル電源 あると便利

また、少し大袈裟だが便利なものがあると頼りすぎてしまうという弊害もある。

ここ数年は、ポータブル電源があるからと、クルマで出かけるときはスマホの充電残量もあまり気にかけなくなっていた。

しかし、私はスマホもそんなに頻繁に使うわけでもないので、実際には走行中に充電を忘れないようにしておくなど、少し気をつけておけば済むことだ。

また、クルマ移動なら少し大きめのモバイルバッテリー(場合によっては複数)を持っておいても負担になることでもないので、やはりスマホのためにポータブル電源が必須などということもない。

モバイルバッテリー ポータブル電源 あると便利

クルマで外出中にパソコンを長時間使いたいのであればポータブル電源があると絶対的に便利(下の写真ではUSB-Cに挿しているが、容量の問題だけでなく、正弦波のポータブル電源は交流も安心して使える)だが、外出先で何かするといっても、少なくとも私の使い方ならiPadなどのタブレットで十分で、タブレットの方が電気の消費量も少ないし、走行中のクルマや少し大きめのモバイルバッテリーからの充電で十分ということになってしまう。

ポータブル電源 あると便利

電動アシスト自転車のバッテリーも、私のは結構バッテリーのもちが良いので、実際のところ旅の途中で足りなくなるほど長距離を走ったことなどない。

冷静に考えると、私にとってのポータブル電源は、あれば便利だから頼ってしまうものの、依然なくては困るほどのものには至っていなかったようだ。

必要に迫られてではなく、あるから使っていただけのようにも思えてきた。

ポータブル電源がなくても大丈夫な理由


では次にポータブル電源がなくても大丈夫な理由について考えてみよう。

車内での生活を楽しむのであればRVパークやオートキャンプ場へ


車中泊という言葉は、本来は「休息をとるために車内で寝る」という、ただそれだけのことを意味していると思う。

道の駅や高速道路のSAの駐車場などでの車中泊について取り沙汰されることが近年増えているが、国土交通省が安全運転に必要な休憩をとるために設けた駐車場なのだから、そこでの休憩中に睡眠をとっても問題などないはずだ。

ポータブル電源 あると便利

しかし近年は、車内での生活、あるいはクルマを中心としたキャンプのような行為までを含め、そういったことを楽しむことが“車中泊”と解釈されているような傾向があると感じることがあるが、それと休憩とがごちゃまぜになっているところに問題なのではと思う。

SNSの車中泊関連のグループなどを覗いていると、テレビ放送を受信するためのアンテナや、DVDや配信動画の鑑賞やゲームをするための大型のモニターなどについて、自身の設備や機器を紹介していたり、意見交換などをしていたりする様子を度々見かける。

電気の消費量の多い機器を長時間使用するため、当然ポータブル電源にも話題が及ぶ。

「どこそこの何を何機積んでいる」のような内容だ。

調理器具 ポータブル電源 あると便利

また、車内での料理に凝る人もいるが、狭い車内での料理には電気を使うのが安全面で有利だ。

どれも人それぞれの楽しみ方なので何も悪いことではなく、外野がとやかく言うことではないことなのだが、そういった車内での生活を楽しむようなことをするのであれば、それは少なくとも「安全に運転するための休憩」は通り越していることになる。

もちろん休憩を通り越しては行けないという意味でもない。

しかし、車内で何をしているかわからないと言えばそれまでだが、休憩をとるために設けられた駐車場で、常識的に休憩の範疇を超えた長時間の駐車(明確な規定はないが、例えば半日以上など)をすること、言い換えれば大容量のポータブル電源がなければできないようなことをしてしまうことも、道の駅や高速道路のSAなどでの“車中泊”が問題になっている一因(他にもっと良くない原因はあるが)になっているのではないかとは思う。

ポータブル電源 あると便利

休憩の範疇を超えてクルマを中心に車内外での生活をゆっくり楽しむようなことをしたいのであれば、RVパークやオートキャンプ場などの施設を利用するのが最も真っ当なのではと思う。

 

そして、そういった施設には外部から電源を利用できるところも多いし、車外で火を使って料理をできるところも多い。

となると、案外ポータブル電源がなくても済んでしまうケースも多いのではないかとも思う。

電気毛布は必要?


近年「冬の車中泊に電気毛布は必須」のようなことを言う人が少なくない。

そしてこれも「車中泊にポータブル電源が必需品」に繋がっているようだ。

車中泊で電気毛布を使うななどと言うつもりはないのだが、電源などない頃から私も含め気温が氷点下の真冬も車の中で寝てきた人は大勢いる(もちろんエンジンは止めてヒーターもかけず)のだから、自分の感覚や経験値だけで、「電気毛布がなければ冬の車中泊は無理」のように断言するような表現は、冬の車中泊未経験者に要らぬ誤解を招くので、しないでいただきたいと常々思っている。

度々書いていることだが、クルマの中で寝られないのなら、寒風吹き荒ぶ雪山でのテント泊など不可能だ。

電気毛布のためにポータブル電源を購入するより、まずはちゃんとした真冬用の寝袋を優先した方が良い。

寝袋 ポータブル電源 あると便利

下が一般的な3シーズン用の化繊寝袋で、上が冬山用の羽毛の寝袋



また、もし電気毛布がなければ寝られないとか、寝袋では寝られないというのであれば、その場合もやはり電源のあるRVパークやオートキャンプ場などを利用した方が間違いないので、やはりポータブル電源が必須ではなくなる。

または、嫌味で言っているのではなく、無理して車中泊などせず、暖かい宿に泊まった方が良いと思う。

ないが故に良いことも


なくても大丈夫なだけでなく、ないからこそ良いこともある。

軽いデジタルデトックスと考える


車内でいかにデジタル機器を快適に使用するかなど、デジタル機器の電源のことに囚われているような人もいるが、せっかく日常生活から離れて旅に出るのだから、もっとその土地の自然や文化に触れる時間を多くとるのも良いのではないだろうか?

先ほども述べたが、電源があるから頼ってしまったり使いすぎたりしまうので、なければ自ずとデジタル機器の使用を軽減することができるし、実際にはなくてもなんとかなるものだ。

駐車場 ポータブル電源 あると便利

過剰なまでに電気が使えないことで、デジタルデトックスとまでは言わなくても少しデジタル機器から離れられる良い機会にもなる。

便利なものは節制ができるのであれば使うのも良いが、なければないでこうした思わぬ効果もある。

“軽い”ではなく、旅を機会にたまにはキッパリやめてみるのも良いのではないかとも思う。

旅先の地の食を愉しむ


先ほど述べた通り、料理を楽しむことを否定するつもりなどない。

しかし、私は旅先ではなるべくなら胃袋のスペースはその土地のものを愉しむために空けておきたいと考える。

食事 ポータブル電源 あると便利

地のものといっても、高いものである必要などない。

外食してしまうのも良いが、車内で軽くなら、道の駅やローカルスーパーで普段あまり見かけないようなものを見つけるだけでも楽しい。

ポータブル電源があれば簡単な調理や温め直しなどもできて便利だが、基本は調理の不要なものや調理済みのものを選び、温かいうちにいただくか、温めなくても美味しくいただけそうなものを選ぶことだ。

また、「昼食をその日のメインの食事にして外食し、夜は軽く車内で」とした方が行動しやすい場合が多いというのもある。

装備がシンプルな方が見えてくるものや発見も多い


その土地でしか見られない風景や出会えない光景、聴けない音などはたくさんある。

余計なものがない方が感性が研ぎ澄まされて敏感にもなるが、車内に篭ってできることが多くて、どこへ行っても車内に篭っている時間が長いと、そういった感覚が鈍ってしまい、旅の印象も薄くなってしまうのではないかと思う

ポータブル電源 あると便利

思い出作りという言葉があるが、私は思い出は作るものではなくて、感性が研ぎ澄まされていれば案外些細なことが強烈な印象となって残り、それが思い出になるのだと思っている。

ポータブル電源を買う前に


ポータブル電源は、確かにあれば何かと便利で、災害時などにも活躍するので、持っておく価値は十分ある。

しかし、以上の通り車中泊での必需品ではない。

あまり良くないことではあるが、非常時であればクルマのヒーターを使って一晩やり過ごすこともできるし、最悪の場合は何時であろうと自分で運転して家に帰るとか安全なところまで移動することができるのもクルマの大きな利点だ。

また、ポータブル電源どころか、毛布すらなくてもプロボックスのシートバックを倒して高速のSAやPAで寝て、翌日もしっかり仕事をしている営業マンは令和の時代になっても日本全国にごまんといる。

元々車中泊なんてそんなものだ。

ポータブル電源 あると便利

現在は情報過多で有益な情報も要らぬ情報もとにかくたくさん押し寄せてくるが、他人の意見に左右されて物を先に揃えるのではなく、まずは気候の良い時に経験してみて、「これがあったら…」のように思い浮かんだのなら、順次揃えて行けば良いだけだ。

ポータブル電源もそんなアイテムの一つだと思う。