VW T5 California 4motion オーナーインタビュー

実用性の高い洗練されたキャンパー「VW T5 California 4motion」



先日ふと思ったのだが、考えてみたら私の周囲には車中泊仕様車やキャンピングカーが結構多く存在している。

そして皆様々な工夫をしていて面白いし、改めて取材してみれば参考になる話も色々聞けると思う。

ということで、身近にある車中泊仕様車・キャンピングカーの取材記事をシリーズ化してみることにした。

第2弾(前回取材したカシータを第1弾ということにして今回が第2弾)は、これまでもたまに記事中にちょこちょこ登場しているVW T5 California 4motionをご紹介。

70年代の後半から80年前後のアメリカでは、後期型VW TypeⅡのオレンジ色(グリーンや茶色もあったけど)に白いポップアップルーフのウェストファリア製キャンパーが大人気で、当時のカリフォルニアの典型的な風景の一部分でさえあった。そんなことを彷彿とさせる名前でもある。

改めて取材させてもらうと、さりげなく凄い車だったので、じっくり目を通していただきたい。

▼前回の記事はこちら▼

VW T5 California 4motion

VW T5 California 4motion

最初にざっとこの車のプロフィールと、この車のオーナーの車歴を少しだけ紹介しておこう。

エンジンは2Lのディーゼルターボ。ダウンサイジングターボというやつだから、パワーがあって燃費が良く、振動も少ないし音も静か。

燃費は秋冬春で12~15km/Lで、エアコンを多用する真夏でその1割減くらいだそうだが、軽油でこれだけ走ってくれれば旅費も大助かりだ。

そして燃料タンクは85Lと大きく、埼玉県から西へ向かって、無給油で下関を超えられた(計算上ではなく実績)そうだ。

雪道を走る車

駆動方式はFFベースだが4motionというタイプで、状況に応じて後輪にも動力を伝えるビスカスカップリング式4WDだから雪道なども安心だ。

この車は2013年11月製造で、ドイツで8000km走った後に日本に輸入された車だ。残念なことに日本には正規輸入されていない車種であるため、並行輸入車扱いとなる。

そしてオーナーはその新古に近い状態のこの車に出会い、14年の10月からこの車に乗り始めている。

それまではランドクルーザー200系に7年乗られていて、最後の2年間はそのランドクルーザーにベッドキットを導入されていた。

元々キャンプを楽しむためにテント泊はされていたのだが、夜に出発したり遠くへ行く際には途中で車中泊をすることになる。そうした場合、ベッドキットがあった方が快適で合理的であるのが、ベッドキットの導入理由だ。

夜 富士山

ベッドキットを導入して車中泊が快適になり、その合理性や魅力を知るにつれ、車中泊をする頻度は増し、より長期で車中泊しながら旅をしたくなる。

しかし1人ならまだしも、奥様や友人と2人分のフォールディングカヤックやインフレータブルSUP、その他様々な道具を積んで出かけると、さすがに快適に車中泊をできる室内スペースとは言い難くなってしまう。そして乗車するのは2人だけでなく、愛犬家でもある。

四万十川

そこで居住性が高くて荷物も沢山積めるキャンピングカーへの乗り換えを考えるのだが、旅をすることやキャンプを楽しむことだけが目的ではなく、アウトドアスポーツを楽しむことが目的であるから、身動きのしやすいことも車に求める大きな条件となる。

また、想定される宿泊人数も通常は1人か2人+小型犬2匹、マックスでも人間は3人と考えると、そんなに大きな車である必要はない。そして普段使いもしやすいサイズとルックスで、乗用車として快適に使える車であれば大変合理的だ。

海の前に止まる車

という条件で考えると、このポップアップルーフのT5 Californiaはほぼパーフェクトな選択肢であり、運命的な出会いでもあったのだ。

進化し続けている内装

VW T5 California 4motion 室内

では、まずは室内から見ていこう。

左運転席仕様の場合、ボディー右側にあるスライドアを開けると正面にキッチン設備が備わっている。

後部座席は回転せず一列で、前後に大きくスライドするようになっていて、後部座席の背もたれを倒して室内後端に設置されたボードと合体させるとベッドになる。

このレイアウトの基本は最も古いT1(TypeⅡ)の時代からある伝統的とも言えるパターンで、70年代後半のT2(後期TypeⅡ)辺りから完全に定着し、フォルクスワーゲンのキャンパーの定番中の定番となっている。

駆動方式がRRだったT3までは、ベッドの一部分の下はエンジンルームだったが、T4からはFFとなっているため、現在ここは大きな荷物収納スペースとなっている。

しかし、車体が新しくなってもレイアウトが大きく変わらないと、なんとなくそのまま作り続けてられているのではとも思えてしまうが、それは全く違う。

駆動方式が大きく変わっても室内の基本的なレイアウトが大きく変わらない理由は、おそらくこれが最も効率良く使いやすいと行き着いてしまったからだと思う。

そして、ぱっと見は大きく変わらないのに進化し続けているところが、冒頭で書いた「さりげなく凄い車」たる所以でもあるのだ。

VW T5 California 4motion 室内2

4WDではあるが、先にも書いた通りFFベースのビスカスカップリング式であるため床が低く、ポップアップルーフを上げなくても室内高は十分に高く、圧迫感がなくて快適だ。この床の低さはハイエースやキャラバン乗りが羨ましく感じる点の一つだ。

運転席と助手席は180度回転し、後部座席と向かい合い、取り外し可能なテーブルを設置すればダイネットになる仕組みとなっている。

そんなに大人数乗りもしないのに3列シートにするなどしてスペースを潰さずに済む、非常に無駄のない仕組みだ。

VW T5 California 4motion ギャレー

清潔感が漂うキッチン設備は、前からシンク、次に2口のコンロ、その後ろは冷蔵庫の順で配置されている。シンクとコンロには使わない時はカバーが被せられるようになっている。

ポップアップルーフを上げればもちろん立って調理をすることができるが、配置が秀逸で、後部座席に座ったままでも全く不自然な感じなどなく座って調理ができる

見た目は大仰ではないが、8ナンバー登録するためだけに設置された、実用性に乏しく実際には使われることもないような設備ではなく、本当に実用性の高い設備だ。

引き出し収納

コンロのガスと上水タンクの位置は後で説明するが、大抵の場合、シンクやコンロの下の多くが水のタンクやサブバッテリーやガスの収納場所として利用されてしまっていることが多い。しかし、この車の場合はシンク下もコンロの下も全て収納庫としてフルに使えるようになっている。

汚水タンクはこのキッチン設備の後ろ側に隠れているそうだ。車のボディーは緩くカーブを描いているから、棚との間に隙間ができる。そのデッドスペースのようなところに専用設計した汚水タンクを作って設置してしまっているのだ。

買ってきた車と出来合いのパーツを組み込んで作った車と大きく異なる点の一つで、こんな目立たない部分が歴史と実績の長さを物語っている。

また、上水タンクも汚水タンクも、この車格でありながらなんと容量が各々80Lもあるそうだ。それだけあれば道具も人も犬も存分に洗うことができる。

そしてサブバッテリーの容量が十分あるのはもちろんだが、オルタネーターの能力も高いのか、冷蔵庫の電源を入れたまま一週間くらい旅をしても走行充電だけで十分で、外部充電などする必要がないそうだ。

内張りテーブル

これはサイドのスライドドアの内側。内張りの一部が外れてしまった!?わけではない。

サイドドアがスライドではなく観音開きだった時代のTypeⅡには、ドアの内側に折り畳み式の小さなテーブルが付いているものもあったが、それの進化形だろうか。

この内張りの一部分のような板を外せば、外で使えるテーブルになるのだ。意外と困るテーブルの収納場所がこんな方法で解決されている。

もちろん折りたたみ式の脚も付いているから、簡単に外せてさっと使える。非常に合理的だ。

VW T5 California 4motion 収納

先程のキッチンの下も含め、この車はとにかく収納スペースが多く、その全てが付け足したような感じではなくて一体感があり、見た目がスッキリしている。

収納スペースが多ければ車内も片付いて気持ちも良い。散らかりきった私の車など、物をどこに置いたのかわからなくなって困ることもしばしばだ。

なんとなくこの近代的な内装が自分には似つかわしくないような気はするのだが、これは素直に憧れてしまう。

VW T5 California 4motion マット

ポップアップルーフを上げてベッド用のボードを引き出すと2階の寝室が出来上がる。そしてこの2階寝室の床がまた凄い。

ご覧の通りマットを捲ると床はアーチの付いた板でスノコ状になっているため、スプリング機能があって蒸れ防止にもなっている。固い板の上にマットを敷いただけで「はい寝室です」はなく、ちゃんとしたベッドになっているのだ。

VW T5 California 4motion ポップアップルーフ内

高さは90cm以上あるため、起き上がって座っても頭がつかえてしまうようなことはなく、圧迫感もない。

ポップアップルーフ 窓

三方には開閉のできる窓が付いていているから、風通しも良いし、景色の良いところに停めれば朝起きたらご覧の通り。良い目覚めを迎えられるだろう。

もちろん窓には網戸も付いているから虫の侵入の心配もない。

ポップアップルーフ スイッチ

ポップアップルーフは電動式だから、上げ下げも楽で安全だ。

以前私はポップアップルーフの付いたステップワゴンを所有していたことがあったのだが、それは手動で、自分は問題なかったけど、上げる時だけでなく閉めるときもそれなりに力が必要だったので、力の弱い女性にはちょっと厳しいかもといった印象だった。

そしてこのスイッチ横のルームミラーの上にある液晶パネルには、サブバッテリーの残量や電圧・充電状態から、ポップアップルーフ、冷蔵庫、FFヒーターなどの状態、静水・汚水タンクの残量など、諸々全ての情報が表示され、ここで一元管理できるようになっている。

一ヶ所にまとまっているからチェックし忘れといったトラブルが最小限に抑えられている。

窓

窓には全て遮光性の高いロールスクリーンが付いている。これも完全に車体に組み込まれていて、使わない時はカーテンがあることなど全く意識させないような作りだ。

自作なら普通のカーテンも味があって良いかもしれないが、中途半端なのが一番残念だ。近代的な内装ならやはりここまで徹底してもらうと気持ちが良い。

フロントウィンドウ

フロントウィンドウにもスクリーンが内蔵されている。凄いの一言。

ちなみにイギリス向けの右ハンドル車にはこれはないそうだ。

網戸

ガラスは保温性の高い二重になっている部分が多いが、簡単に付け外しのできる網戸も完備されているので、暑い夜も快適だ。

後部座席

後部座席に戻ろう。

後部座席は、ダイネットにするときのように後ろにいっぱいに下げてあるとリムジンのような状態であるが、前いっぱいに引いて乗車しても全く窮屈な感じではない。

その状態なら、後部座席から後ろはかなり広い荷室になるから、人数が少なくて大きな荷物が多い場合などは、その状態で使うのも良いと思う。

ベッド設置風景

後部座席を前に引いて背もたれを倒すと元々車内後端に設置してあるボードと高さがあってベッドとなる仕組みだ。

このままでも十分快適なベッドとなるのだが、さらにこの上に敷くマットレスまで用意されていて、寝心地も完璧だ。

車内 ベッド

さらに芸が細かいと感じるのが座面部分だ。

座面を横から見ると断面が長方形ではなく、クサビ型になっている。座席として使う場合は平らではなく、後ろが少し低くなった椅子として自然な状態になるのだが、ベッドにする時にはこの低い部分が持ち上がり、平らになるようになっている。

座り心地も寝心地も犠牲にしない細かな工夫。脱帽のアイディアだ。

リアゲート内

リアゲートを開けるとこんな感じ。T3まではエンジンルームだったベッド下は、T4からはエンジンが前に移動したおかけで、大きな収納庫になっている。

上水タンク

左側面の収納庫の棚の下は、LPガスの収納スペースだ。

難易度の高くなってしまったLPガスの代わりに、この車のオーナーはアダプターを取り付けてカセットガスをここに収めているが、ここはLPガスのボンベの形に合わせて円筒形にくり抜かれ、ボンベがピタッと収まるようになっているのだ。

そしてさらに感服してしまったのが、このボンベを入れる部分の周りだ。

なんとここは上水タンクなのだ。と言うより、上水タンクの中を円筒形にくり抜いたような形にして、ボンベを収める部分にしているのだ。

無駄なスペースを作らないだけでなく、ステーなどを取り付けることなく、安定して安全にボンベを固定できる仕組み。素晴らしいとしか言いようがない。

リアゲート・チェア

スライドドアの内張りの一部がテーブルの天板になっていたが、リアゲートにはチェアが2脚(純正品)収納されている。

折り畳みと言えどテーブル同様意外に場所をとり、どこに積むか迷うチェアをこんなところに収納してしまうなんて……。脱帽のアイディアばかりで帽子を何枚重ねて被っておけば良いのやらだ。

純正オプションのキャリアとサイドオーニング

屋根上

次は車外に目を移してみよう。まずは屋根から。屋根には純正オプションのキャリアが付けられている。

一般的なビルダーの作ったポップアップルーフの場合、キャリアが付けられなかったり、付けることがかなり難しいケースが少なくない。

しっかりした純正のキャリアがあれば安心して屋根にボードやカヤックなどを積むことができるが、見た目もご覧の通り優れている。そして、ボードを積んだままポップアップルーフを上げるのも全く問題ない

オーニング1

スライドドアのある右サイドにはオーニングが付いているが、これがルーフキャリアなどに後付けするものではなく、元々車体に付けらた溝に設置するタイプであるためしっかり設置され、見た目的にも非常にスッキリしている。

そして車体との間に全く隙間ができないため、そこから雨漏りしてしまうことがないのは大きなポイントだ。

オーニング溝左

このオーニングが取り付けてある溝は左右両側に付いていて、この溝に挟み込むようにして取り付けられる、もっと簡易的な専用のタープのようなオプションもあるそうだ。

オーニング作業中

引き出すのも収納するのも簡単で、作業は1人でできてしまう。そして、心地よいそよ風程度ならペグダウンしなくても問題なく使うことができる。

オーニング2

先程までスライドドアの内張りとなっていたテーブルと、テールゲートの中に隠れていたチェアを設置すればご覧の通り。

気に入った場所が快適なアウトドアリビングとなってしまう。

オーニング50cm

そして、オーニングを引き出す量は自在に調整できるが、50cmまでなら脚を出さなくても使えるようになっている。これは意外にも非常に大きなポイントだ。

しっかりオーニングを出してしまうと問題あるようなシチュエーションは多いが、スライドドアの上にちょっとで良いから庇(ひさし)があればと思うことは、VANに乗っている人なら大抵経験のあることだ。

雨が降っている時にサイドドアを開けていると、風がなくても結構雨が車内に入り込んでしまうが、50cmの庇があればそれを大幅に防ぐことができる。これは素晴らしいと言うより限りなく羨ましい!

オーナーお気に入りのポイントやアドバイス

ファントゥドライブ

お気に入りのポイントを訊ねると、非常に使い勝手が良くて快適であることはもちろんなのだが、それに加えて「そこそこパワーがあって足回りがしっかりしていて、燃費が良くてファントゥドライブであること。だから遠くに行くのが苦にならないし楽しい。これも旅車の重要な要件だと思う」といった意見が聞かれた。

宿としての居住性が高くても、気持ちよくストレスなく運転ができなければ長旅は厳しいものになってしまう。これは私も大いに同感するところだ。

自転車

そして最後に購入を悩んでいる人に何かアドバイスをと訊ねたところ、「『仕事をリタイヤしたら、キャンピングカーを買って北海道を旅したい』などのように言う人が多いが、お金も体力もあるうちに購入した方が充実すると思う。また、忙しくて連休が取れない人ほど、外遊び好きなら導入したほうがいい」といった返答が返ってきた。

車旅

リタイヤした後に旅を楽しむのも素敵な夢ではあると思うのだが、アウトドアスポーツ好きにとっては、ハッキリ言ってしまうと体が思うように動かなくなってしまってからでは意味がないのだ。これは常々私も思っていることだ。そして、忙しい人にこそ合理的な選択というのも頷ける。

取材を終えて

小型のVANを改造してキャンピングカーに仕立て上げる手法は、フォルクスワーゲンのトランスポーターの初代TypeⅡのキャンパーが元祖と言って間違いないと思う。

しかし、この車をじっくり見直してみると、もはやフォルクスワーゲンのトランスポーターという器を使って改造したキャンパーではなく、ゼロからキャンピングカーを作って、最後にトランスポーターと同じ外被を纏わせたようなレベルにまで達しているように感じたのだった。

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