N-VANとバモスを比較!走行性能・居住空間にどんな違いがあるのか
似て非なる仲間達
N-VANの全体的に直線的でありながら丸みも取り入れたデザイン、余計なカーブなどを入れない直線的なプレスラインなどは個人的には大の好みだ。
しかし、デザインは好みの問題でもあるが、客観視するとこの手の車にあまり興味のない人が見たら、N-VANはアクティ/バモスやエブリイなどより少しボンネットが長い程度の違いにしか見えないかもしれない。
こうして並べてみても、バモスだけでなく、メーカーの違うエブリイにも似て見える。
しかし、自動車としての仕組み、成り立ちなどはこの2車種とは全く異なる。
アクティバンのプラットフォームはアクティトラックと共通で、最初から貨物車として設計された車だ。
そして、兄弟のバモスもその乗用車バージョンなので、貨物車から派生した乗用車バージョンということになる。
それに対してN-VANは名前の頭にN-がつく通り、乗用車のNシリーズと同じプラットフォーム上に成り立っている。
N-VANとバモスは生い立ちが真逆ということだ。
そして、駆動系なども全く異なる。
アクティ/バモスは、エブリイやハイゼットカーゴ/アトレーとはエンジンの搭載位置などが異なるが、どれも後輪駆動(4WDもあり)だ。
それに対し、N-VANは短いボンネットがあり、その中にエンジンの収まるFF(フロントエンジンフロントドライブ)なので、前輪駆動(4WDもあり)だ。
一見外観が似て見えても、N-VANだけ根本的に大きく異なる車ということだ。
元祖トールワゴンのDNAを引き継いだ車
現在、軽乗用車はFFのトールワゴンやハイトワゴンと呼ばれる形状の車種が主流になっているが、この流れの発端となったのは1993年に登場したワゴンRだと言える。
しかしその20年も前、1972年から1974年とわずか2年の短命に終わりながら強烈なインパクトを残したホンダ ライフステップバン(通称ステップバン)という車が存在した。
ステップバンもN-VAN同様区分的には商用車(貨物車)だが、その名の通り乗用車のライフのプラットフォームの上に作られた、背が高く短いボンネットのあるFFのバンだ。
トールワゴンやハイトワゴンブームの発端になったのはワゴンRだが、元祖軽トールワゴンはホンダのステップバンだ。
そのステップバンは70年代後半から80年代前半頃、サーファーにも人気があり、持っていた友達もいたので私も何度か乗ったことがある。
少し急坂では止まってしまうのではないか、と思うような速度になってしまうこともあった(その個体の問題かもしれないが)が、外観だけでなく内装も質素、だけどダッシュボードの上がちょっとしたカウンターテーブルのようになっているなど、その当時の普通の車にはない雰囲気と強烈な個性があり、大変楽しい気分になる車だった。
FFであることのメリットとデメリット
先述した通りバモスとN-VANとでは駆動方式がまるで異なる。
そして、アクティバン/バモスはリアミッドシップというスポーツカーのようなエンジンレイアウトだ。
駆動方式やエンジンレイアウトの違いによってドライブフィールは異なり、細かいことを言えば私にも好みはある。
しかし、はっきり言ってしまうと、現在の車は素人が普通の道路を普通に運転するだけなら、後輪駆動であろうと前輪駆動であろうと大差はない。
ドライブフィールの違いなどといった少々小難しい話は置いておき、ここではエンジンレイアウトの違いによって、室内空間や使い勝手などがどう変わってくるかといったような話のみに絞ることにする。
そして、FFの方が有利となることも多々あるが、先に不利になってしまうことから話を進めたいと思う。
アクティバン/バモス、エブリイ、ハイゼットカーゴ/アトレーは、どれも荷室の床面が後輪より上にあるため荷室にタイヤハウスの出っ張りがない。
荷室は全面に渡ってほぼ同じ室内幅で、長方形に近いフラットな形状となる。
これは同じ大きさの段ボール箱のような物をたくさん積む際などには大変合理的な特徴だが、車中泊で使用する際にも大変使いやすい。
アクティの荷室幅は1335mmあるが、これはそのまま何もしなくても2人が無理なく並んで寝られる幅だ。
対してN-VANにはタイヤハウスがあるため、その部分の床面の幅が狭くなってしまっている。
そのため、N-VANの荷室の最大幅はアクティと比較すると10cm狭いものの(これはFFであることとは直接関係ないが)1235mmあるが、実測したところタイヤハウスのある部分の床面の幅は90cm程度しかなかったので、2人が並んで寝ようとすると、最低でもタイヤハウスより高い位置まで床を嵩上げする必要がある。
しかし、床は室内高を犠牲にして嵩上げすれば(嵩上げした床の下も荷物の収納スペースとして利用できる)平らにできるが、それよりもFFレイアウトで不利になる点は、短いとは言えエンジンの収まるボンネットがあるため、その分室内長が短くなってしまうことだ。
2名乗車の場合のアクティの荷室長は1725mm、荷室フロア長は1940mmあるので、真っ直ぐに向いて寝られる人は多い。
バモス・エブリイ・ハイゼットカーゴ/アトレーいずれもこれと大差ない。
私の身長は175cmには満たない(ピークは175cmだったが、悲しいことに既に少し縮み始めている)が、余裕たっぷりとは言えないまでも、実際にバモスの中で全く無理なく寝ることができている。
だが、後部座席をたたんだ2名乗車状態のN-VANの荷室長は1510mmしかないので、この寸法で寝ることができる人はかなり限られてしまうことになる。
しかし、N-VANにはこういった不利な点を補う利点や凄い仕組みがある。
ここからはFFのN-VANならではの良い点を話そう。
まず挙げられるFFレイアウトであることの大きな利点は、床を最大限低くできることだ。
N-VANの荷室床面地上高は525mmとなっている。
それに対し、私のバモスを実測したところ650mm程だったが、念のためアクティバンの寸法をネットで調べたところ、荷室床面地上高は665mmとなっていたので、N-VANはアクティバンより12cmも床が低いことになる。
上の写真の通り、床面の高さには大きな差がある。
そして、荷室床面地上高が低ければ、その分室内高を高くとることができる。
アクティバンの室内高は1200mmで、より全高の低いバモスを実測したら1080mm程度だったが、N-VANの室内高はなんと1365mmもある。
アクティバンより実に16cm以上も高く、この数値は標準ルーフのハイエースの室内高より3cm高いのだ。
荷物の積み下ろしの際にハイエースの中で人が腰を屈めて立っている光景を目にすることがあるが、極端に大きな人は別としても、N-VANは全高1945mm(2WD)の軽自動車でありながら、大抵の人が腰を屈めれば無理なく中で立つことができるということだ。
実際にバモスの中で私は全く立つことなどできないが、N-VANなら可能だ。
中で立てる高さがあれば当然荷物の積み下ろし時に有利で積載量にも影響するが、良いことはそれだけはない。
例えば、寝転がった状態でパンツや靴下を履き替えようとすると、下手すると腹筋か脚のどこかが、つるようなことにもなりかねない。
しかし、N-VANなら車内で立ってパンツを履き替えられるのだ。
また、65cmの高さがあるところに深く腰掛けたら、大抵の人は足がブラブラすることになるが、高さが525mmなら、床をベンチやスツール代わりにして足を外に出して普通に腰掛けることができる。
椅子を外に置いて車の床をテーブル代わりにするという使い方もあるが、車の床に腰掛けて外にテーブルを置くといった使い方を想像すると、何かと便利なことが多そうな気がする。
次に、先程2名乗車の際のN-VANの荷室長は1510mmしかないと書いたが、N-VANは運転席以外の座席を全て床にダイブダウンして、運転席以外全体を平らな床にしてしまうことができるのだ。
それによって最長部分では床面の長さが2635mm(この数値はダッシュボードがオーバーハングした下の部分になるので、この寸法を最大限に活用できるとは言い難いが)にも達することになる。
この写真の中の長い方のSUPのボードの長さは8フィート1インチ=2464mmだが、このように斜めに向けて積めば、運転中の視界の妨げになることも、運転の邪魔になるような積み方になることもなく、全く無理なく収まってしまう。
そして、ご覧の通り問題なく2枚のボードを積むことができている。
だが、バモスで助手席を倒して同じような積み方をすると、左側の視界を妨害することになってしまう。
この違いは、やはり床が低いことで得られる大きな恩恵だ。
また、縦方向にも斜めにするような工夫をすれば9フィートのロングボードを積むことも可能だと思う。
では、DRIMO読者にとって肝心な寝床の確保に関してはどうか?
N-VANにはホンダ純正もアフターマーケット製品も含め、2名就寝可能(その場合は運転席部分も使うことになる)な様々なベッドキットなどが販売されている。
しかし、1人だけで使用するのなら、助手席をダイブダウンした状態でコットを置いたり、タイヤハウスより高い位置になるベッドを作って設置(下は荷物収納庫)したりすれば、運転席はそのままでも十分な広さの車中泊仕様車が出来上がってしまう。
その際にも居住スペースの室内高が高いことで、他の軽バンにはない快適さや利便性を感じられるのではないかと思う。
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