車中泊仕様ハイゼットジャンボの居住性と使い勝手を徹底解説!!1年3ヶ月レビュー
ハイゼットジャンボの運転席の居住性
今回は車中泊中のシェルの中の居住性のことではなく、ハイゼットジャンボ本体の居住性が主題なので、主に運転席に座っているときの居心地がどうなのかといった話を中心に話を進めていこうと思う。
広いキャビン
「ジャンボ」は全体のサイズのことではなくキャビンの大きさのことで、そのキャビンの大きさこそがこのクルマの一番の特徴となっている。
ジャンボのキャビンは、長さが拡張されているだけでなく、ハイルーフにもなっている。
荷台にシェルや骨組みなどが付いているとそうでもないのだが、普通のキャビンのハイゼットラックと比べると、かなり頭デッカチのように見えるというか、ちょっとアンバランスな感じがしなくもない。
特に全体のサイズも小さかった時代の古いタイプに対しては、正直に言うと「便利そうだけどちょっとカッコ悪いな」といった印象も抱いていた。
だが、「普通の軽トラのキャビンとは異次元」が、実際に私が初めてハイゼットジャンボの運転席に座ったときの第一印象だ。
ちょっと大袈裟に聞こえるかもしれないが、本当に普通の軽トラのキャビンとは居心地が全く異なることは確かだ。
一般的な軽トラの運転席はというと、キャビンの奥行きが短いため、シートを前後に動かせたとしても可動域は小さく、シートバックは薄く平面的で、ほぼ直立していているようなイメージだ。
運転姿勢は、運転手の体格に合わせてドライビングポジションを調整するというより、どちらかと言えば運転手が室内空間に合わせて多少なりとも体勢を調整する必要があるといったような感じになる。
ハイゼットトラックではないが、狭いキャビンとほぼ直立したシートバックがどんなイメージなのか、経験談で説明しよう。
私の体格は、身長は日本人の平均より少しだけ高い程度だが、骨格が大きい。
そんな私が旧規格(1998年以前)サイズのスバル サンバートラック(MT)を使っていたことがあったのだが、長靴や少しゴツい靴を履くと長くもない脚の膝のやり場に工夫をする必要があり、若干ハンドルに覆いかぶさるような猫背気味の姿勢で運転しているような感じになっていた。
しかし、主に片道50km以内程度の短距離で使っていた(たまに片道100km以上走ることもあったが)こともあり、「慣れてしまえばそんなもの」と割り切って考えられたので、あまり問題と感じることもなかった。
とはいえ体に優しくないことは確かで、一日中この中に収まっている赤帽のドライバーさんて凄いなあと感心もしていた。
また、高速道路などを走行していると、周囲も床も「辛うじて薄い鉄板で覆われているだけだな」といった感覚で、安全性はバイクに乗っているの同程度と感じるようなキャビンだった。
1998年までの規格の軽トラのキャビンとはそんなもの(それ以前の規格はさらに小さく狭いので推してしるべし)で、現在の乗用車にしか乗り慣れていないような人には「かなり特殊な空間」と感じられるのではないかと思う。
しかし、現行のS500P系のハイゼットトラック(OEMの現在のサンバーも)のキャビンはそれと比べたらずっと「クルマらしく」なっていて、ジャンボではない他のグレードのハイゼットトラックも、シートの前後スライド範囲が14cmと比較的大きい。
だが、良くなったとはいえ、ジャンボではないグレードのシートバックは依然ほぼ直立していて、後ろの壁が迫っているせいか「広々」といった感じはしない。
シートのスライド範囲が比較的大きいため、カタログには「大柄な人にも…」のように書かれているが、実際には目一杯シートを後ろに下げている人もかなり多いと思う。
このシートスライドは、どちらかと言えば大柄な人への対応というより、小柄な人への配慮(農家のおばあちゃんなども運転しやすいように)のような気がしなくもない。
ところが、ジャンボのキャビンは標準のエクストラなどと比べて室内高が90mm高く(ジャンボではない「ハイルーフ」もこれに関しては同様)、前後の奥行きは270mmも長くなっている。
そして、シートを前後にスライドできるだけでなく、厚みもあるシートバックは平面ではなく、「フツーのクルマ」のように凹凸もあり、リクライニングもする!
ほんの少しシートバックをリクライニングさせられるだけでも自然で楽な運転姿勢をとれるようになる。
窮屈な感じも大幅に解消される。
もちろん薄く平らなシートバックとは背中への当たりも全然違う。
また、基本的に背中から後ろは運転中に使う部分ではないので、そこに空間があろうとなかろうと関係がないはずなのだが、薄いシートバックのすぐ後ろに鉄板とリアウィンドウが迫っていると圧迫感があり、より狭く感じてしまう。
ゆとりを感じさせるシート後ろの空間は、気分的にも疲れにくくしているように思う。
そして、フルリクライニングするわけではないが、リクライニング機構があれば休憩する際にもありがたい。これも長距離運転では重要なことだ。
また、シートの後ろの空間は手荷物や常備品を置くスペースともなり、利便性も大幅にアップしている。
この27cm延長された空間の役割は非常に大きいと思う。
室内高に関しては無駄とも言えるほどの高さがあるが、信号待ちなどでも腕を伸ばして軽くストレッチをできるのは、長時間の運転にはありがたい。
また、シート後ろの空間の上部には棚を設置できるだけの十分なスペースがある。
ダイハツのオプションとしてもここに取り付ける棚(リヤシェルフ)が用意されているが、アフターマーケットパーツにもあるようだ。
また、私の年式の頃はオプション設定だったので付いていないが、最新型ではフロントウィンドウ上のスペースにも棚(オーバーヘッドシェル)が標準装備になっているようだ。
座面と着座位置
軽トラのシートは、普通は座面も薄っぺらくて小さい。
しかし、S500P系ハイゼットジャンボのシートは、シートバックだけでなく座面も立派で、十分な大きさと厚みと凹凸もある。
これもハイゼットジャンボの運転席に最初に座った時に、「軽トラじゃないみたい。」と感じた要因になっている。
当然ながら長時間座っていればこの違いによる影響は大きい。
次に横方向の着座位置に関して。
以前乗っていたマツダ ボンゴOEMのニッサン バネットはハイゼットトラックと同様キャブオーバースタイル(運転席・助手席下に前輪があるスタイル)だ。
これも良いクルマではあったが、このバネットは運転席がかなり外側に追いやられていて、右肘は常にドアかサイドウィンドウに当たり、真っ直ぐ前を向いた時の視界の右側1/5~1/4辺りのところに右側Aピラーが入ってしまうような着座位置だった。
運転席が外側に追いやられてしまっている理由は、余裕はなくてもそれができてしまう幅があるため、キャブオーバーの小型車は前席3人掛けの設定もあるからだと思う。
しかし、右カーブではこのAピラーが視界に入って邪魔に感じることもあるし、長時間運転していると直進していても意外と鬱陶しく感じてくる。
しかし、軽トラは2座席で、小型車と軽自動車の幅の差は実質20cm程度だ。
であれば、20cmしか幅の広くないところに3人分のシートを詰め込むよりは、20cm狭くても2人分のシートしかない方が空間的に余裕が生まれる。
ハイゼットジャンボの運転席は、大抵の小型サイスのキャブオーバー車より右側にゆとりがあるため、右側Aピラーが運転中特別気に掛かるようなことはなく視界は良好で、右肘が窮屈に感じるようなこともない。
実はハイエースより広々している運転席
意外に思われるかもしれないが、案外200系ハイエースの運転席は広々とはしていない。
もちろん窮屈などいうことはないのだが、少なくとも私は200系ハイエースの運転席に座るとそう感じる。
フロントウィンドウの大きさやダッシュパネルの高さなども影響していると思うが、200系ハイエースより設計の古い私のE25キャラバンの方が運転席に座った時の感覚は広々としている。
そして、実は200系ハイエースよりハイゼットジャンボの運転席の方が広々しているようにすら感じる。
これは個人的な感覚で数値的な比較ではないのだが、実感していることだ。
但しこれは運転席のことだ。
ハイゼットジャンボは助手席側も決して窮屈などということはなく、シートの作りも運転席と同レベルで補助席的なものではないが、助手席に座ってみるとドライバーズシートファーストに設計されているようには感じる。
広い足元
ハイゼットジャンボのキャビンが広いのはシート周りだけでなく、足元も広い。
ハイゼットトラックはシート下に前輪のある所謂キャブオーバースタイルで、エンジンは前軸より少し後ろに配置されている。
一方、ハイゼットトラックの兄弟である軽バンタイプのハイゼットカーゴ/アトレーは、ハイゼットトラック同様後輪駆動だが、前輪がシートより前、ほぼ車体の前端にあり、エンジンは前席下に配置されている。
ハイゼットカーゴ/アトレー以外にもスズキ エブリイやバモス(エンジンの位置は違う)や、軽ではないがタウンエースなどもこの前輪が前にあるスタイルだ。
このスタイルの場合、室内の足元辺りに前輪のタイヤハウスの膨らみができてしまう。
そして、この膨らみを避けるために、右ハンドル車の場合はペダル類が全体的に車体中央寄りにオフセット気味になってしまう傾向がある。
バモスの運転席に座ると、気をつけの姿勢をとったときのような位置にアクセルペダルがあり、つま先を膝より内側に向け内股のようにしてブレーキペダルを踏むような感じになる。
この体勢は厳しいというほどではないのだが、長時間運転していると足が大きな人は少々窮屈に感じてくる。
バモスだけでなく、このスタイルの場合は概ねこのような感じか、もっと不自然な姿勢を強いられる車種もあるのではないかと思う。
しかし、ハイゼットトラックのようなキャブオーバースタイルの場合はこの膨らみがないため、足元の空間を広く確保することができる。
ハイゼットトラックの場合は、両足を若干広げた楽な姿勢の足の位置に右にはアクセルペダル、左にはフットレストがある。
そのため、長時間アクセルペダルを踏み続けていても窮屈感を感じるようなことがない。
ブレーキペダルも膝より内側につま先を向けなくとも踏める位置にある。
そして、ペダル間の間隔も広く、自然な位置にブレーキペダルがあるため、踏み間違えの危険性も低くなっているのではないかとも思う。
私のは4ATなので2ペダルだが、ペダル間の間隔を広くとれるため3つのペダルが無理なく配置され、5MTのクラッチ操作感も良好なのではと思う。
このようにS500P系ハイゼットジャンボは上半身だけでなく、下半身もリラックスした姿勢で運転し続けられる。
一方キャブオーバースタイルで懸念されるのは、前方の衝突安全性だ。
前輪が前端にあるスタイルの方が安全性が高そうな感じはする。
実際、厳しくなった衝突安全性の基準に対応するために、軽トラもスズキ キャリイ、ホンダ アクティ、ミツビシ ミニキャブなどは前輪を前端に配置していた時期があった。
しかし、前輪を前端に配置すると自ずとホイールベースが長くなり、小回りで不利になってしまう。
そのせいで、特に農家からの評判が悪くなってしまったようで、キャブオーバーでも安全基準をクリアできるように工夫し、キャリイとアクティはキャブオーバースタイルに戻った。
同じ安全基準がクリアできているのだから、安全性に関しては遜色ないのだと思うが、小回り云々より、私は足元が広くて長時間運転していても疲れにくいことを何より気に入っている。
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