車内の保管・積みっぱなし危険物

缶が破裂!?車内に絶対に保管・積み放しにしてはいけないもの



真夏の車内は高温になる。

これは一般常識としてほとんどのドライバーが意識していると思います。

ですが、実際に、車内の気温が何度ぐらいになるのかについては、具体的に把握している方は少ないのではないでしょうか。

今回は、JAF(日本自動車連盟)が行った真夏の車内温度についての実験を参考に、車内に保管、あるいは放置してはいけないものについて考えてみようと思います。

炎天下の車内温度は最高で70℃にもなる!

今回参考にしたのは、JAF(日本自動車連盟)が2012年8月に行った炎天下での車内温度の測定実験です。

5台のミニバンを用意し、それぞれ条件を変えて同時進行で車内温度を測定しています。

①対策なし(黒):何も対策せずに炎天下に放置した車両、ボディカラー「黒」
②対策なし(白):何も対策せずに炎天下に放置した車両、ボディカラー「白」
③サンシェード装着:フロントウインドウに「サンシェード」を装着、ボディカラー「白」
④窓開け(3cm):窓を3cm開けた車両(どこの窓を開けたか不明)、ボディカラー「白」
⑤エアコン作動:エアコンを作動させた車両(設定温度や風量は不明)、ボディカラー「白」

以上、5台のミニバンの車内温度を25度に揃えてからテストを開始しています。

12:00にテストを開始すると車内温度は徐々に上昇し、最も車内温度が高かった「無対策・黒」の車両では、1時間もしないうちに50℃を超え、ボディカラー「白」でも無対策車は14:00には50℃に達しました。

室内温度で30℃を越えなかったのはエアコン作動車だけで、他の4台はすべて40℃を超える暑さとなりました。

さらに、ダッシュボード上の温度は、無対策車では「黒」「白」問わず、70℃を超えています。ダッシュボード上の温度だけで言えば、サンシェードの効果は高く、エアコン作動車両よりも温度が上昇していません。

ダッシュボード上に様々なグッズを置いてテストしていますが、クレヨンは溶け、スマホは動作異常を起こしています。

今回のテストでは、缶飲料やスプレー缶の破裂は起こりませんでしたが、同様の試験を行った春・秋のテストでは、缶飲料の破裂が起こっています。

ちなみに、春のテストの際の車内温度は以下の通りです。

【2007年4月26日(春)のテスト】
(1)ダッシュボード付近:70.8 ℃(時間:11時50分頃)
(2)車内温度(運転席の顔付近):48.7℃(時間:14時10分頃)
(3)測定日の外気温:23.3 ℃(時間:13時40分頃)
(4)フロントガラス付近:57.7℃(時間:11時50分頃)

4月でも炎天下での車内温度は50℃近くまで上昇し、ダッシュボード付近では8月と大差のない70℃超となっており、車内温度に注意すべきは真夏に限らないことがわかります。

以上のように、炎天下に置かれた車内温度は、想像以上に上昇しますので、それに即した対応が必要であることは言うまでもありません。

<参考:JAFユーザーテスト>
春:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/spring

夏:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer

秋:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/autumn

室温50℃にもなる車内に保管・放置してはいけないもの

車内には様々なものを乗せています。

特にキャンピングカーや車中泊仕様車などは、宿泊やキャンプのためのアイテムを常時保管している事もすくなくありません。

ガス缶の注意書き

例えばこちらは、筆者の自宅にあった車両に積んでおきがちなアイテムの注意書きです。

  1. ガスボンベ(CB缶)… 「保管は40℃以下」と明記
  2. 殺虫剤(エアゾール)… 「40℃以上となるところに置かない」と明記
  3. ライター、チャッカマン … 「50℃以上の高温を避け…」と明記
  4. 炭酸飲料(ビール)… 「直射日光の当たる車内等高温になる場所での放置を避け」と明記

炭酸飲料を除き、いずれの場合も40℃~50℃の限界温度を明記しています。

これに対して車内温度は、前項のJAFのテストからもわかるように、ダッシュボード付近では70℃超、それ以外の場所でも平均で40℃以上、最高温度では50℃を超えていますので、あきらかに、ガスボンベやスプレー缶の車内での保管・放置は危険である事が分かります。

また、炭酸飲料についても、JAFテストでは破裂した事例が報告されていますので、危険度という点ではガスボンベやガスライターほどではないにしても、かなり厄介なことになるのは明らかです。

スマートフォンも高温には強くない

Appleは、iPhoneを0℃~35℃の間での使用するよう呼び掛けています。

また、保管場所の温度についても、-20℃~40℃と規定しており、『駐車中の車内は高温になることがあるので、デバイスを車内に置いたまま放置しないでください』と明記しています。

さらに45℃以上の場所に放置した場合、iPhone本体だけでなくバッテリーの劣化を早める可能性があるため、車内への放置は充分に注意すべきです。

常時保管ではなくその都度積み込みを推奨

キャンピングカーや車中泊車のメリットや、使い勝手の良さの事例として挙がるのが、『常に出発の準備ができていて、思い立ったらすぐにキャンプや車中泊に出かけられる事』です。

また、災害対応を考えても、災害発生から救援の手が届くまでの数日間を生き延びられる方法として、キャンピングカーは大きな期待を持てます。

そうしたメリットや期待の背景には、「全ての道具やアイテムが車内に保管・ストックされているため、面倒な積み込み作業がなく、身一つで乗り込めば良い…」という事がありますが、炎天下での車内温度を勘案すると、それは必ずしもメリットばかりとは言い切れないものがあります。

炭酸飲料程度であれば、車内が悲惨な状態になる程度で済むかもしれませんが、可燃性のガスが充填されたものを40~50℃にもなる車内に常に乗せておくのは、かなり怖いことではないかと思います。

可燃性ガスが充填されたアイテムは、日ごろは自宅内の涼しい場所に保管し、車中泊やキャンプ時に積み込んだ方が安全面でのリスク回避にはなるのだろうと思います。

思い立ったらすぐに出かけられる、災害時の緊急時に対応できる…といったメリットをスポイルするかもしれませんが、車内で発火してしまうよりはマシなのでは?と思えます。

冷蔵庫やクーラーボックス内での保管

筆者が所有するキャンピングカーは車載冷蔵庫が備わっていますが、これを使って車内ストッカーとして利用できるかどうかを試してみました。

筆者は日ごろから、この車載冷蔵庫を冷蔵庫として使ったことがなく、電源を入れずに、保冷材や氷などで冷やすこともなく、単純にミネラルウォーターとカップ麺の保管場所として使っています。

そこで、この冷蔵庫の中と車内のテーブル上の2か所に同型の温度計を設置して、24時間の温度の最高温度を記録してみました。冷蔵庫の内と車内のテーブル上に置いた温度計左側が車内に置いたもので、右側が冷蔵庫内に置いたものです。

車内の最高温度が「44.2℃」と記録されているのに対して、冷蔵庫内は「36.2℃」と記録されています。

これを見れば明らかなように、車内温度は最高で44℃を超えるような状態でも、冷蔵庫内は30℃台中盤を維持していますので、断熱効果のない車内の戸棚やベッド下の収納庫などに入れて保管するよりははるかに安心といったところです。

筆者的には、炭酸飲料など、可燃性のないものであれば冷蔵庫、あるいはクーラーボックス内で常時保管しても大丈夫かなと思いますが、36.2℃と40℃未満の冷蔵庫内であっても、可燃性のボンベ類やスプレー缶などを車内に常時保管する気にはなれません。

高性能クーラーボックス

前項で、断熱効果のあるストッカーとして、クーラーボックスの使用を提案していますが、一口に「クーラーボックス」といっても、保冷能力は様々です。

発砲スチロールだけのものや、一般にアウトドア用として販売されている発泡ウレタン製のものなどでは、車内の断熱ストッカーとしては少々力不足であることは否めません。

当然ながら、発泡スチロール製の簡易的なクーラーボックスに、断熱効果のあるストッカーと同様の効果を期待するのは無理です。

確実な断熱を期待するなら、釣り用クーラーボックスに多い「真空断熱パネル」を使用したクーラーボックスを検討すべきでしょう。

「真空断熱パネル」を使用したものであれば、保冷能力も高く、断熱効果を期待できそうです。

まとめ

キャンピングカーや車中泊車は、キャンプや車中泊に必要なものが常備されていて、思い立ったその時に出発できるのがメリット。

災害発生時の緊急シェルターとして考えた場合も、食料や水なども含め、常備している事が重要です。

しかし、真夏の炎天下に駐車している車内温度は、ガスボンベやスプレー缶の「規定温度」を超える暑さになります。

記載されている温度は、安全マージンも含んで書かれているとは思いますが、その辺りを勝手に「大丈夫だろう」と判断するのはとても危険です。

どうしても車内に保管しておきたい場合には、断熱機能のあるストッカーとして、「真空断熱パネル」を使用した高性能クーラーボックスの購入を検討するなど、安全対策をとっておきましょう。

いずれにしても、炎天下の車内は想像以上に高温になる事は覚えておくべきでしょう。